【ジオ用語解説】オープンストリートマップ

誰でも編集できる“Wikipediaの地図版”なオープン地図サービス

Geoloniaが提供する地図は、自由でオープンな地図を市民の手で作り上げる世界的なプロジェクト「オープンストリートマップ(OpenStreetMap:OSM)」の地図データを活用しています。

OSMは、2004年に英国のスティーブ・コースト氏によってスタートしました。不特定多数の人が自由に参加し、地図を編集できるこのシステムは“Wikipediaの地図版”とも呼ばれており、誰もがアカウントを作るだけで簡単に地図を編集できます。

オープンストリートマップ © OpenStreetMap contributors

一般的な地図では、大規模な道路や施設であれば開通・開店してからすぐに地図が更新されることもありますが、道路や施設の規模が小さい場合は、反映されるまで時間がかかることもあります。

一方、OSMを使えば、近所の家が建て替えられたり、新しい店がオープンしたり、新しい道路が開通したりしたときに、ユーザー自らの手によってすぐに地図の内容を更新させることができます。

個人の編集だけでなく企業や自治体の地図データも活用

OSMの地図編集者は“マッパー”と呼ばれています。マッパーは世界各国に存在しており、2019年の時点でアカウント登録数は500万人を超えています。地図編集を行うのは個人だけでなく、OSMの地図データをビジネスに利用している企業が地図編集を行う場合もあります。

さらに、地域によっては企業や自治体が保有する地図データのインポートの許諾を受けている場合もあります。日本エリアでは、過去に国土交通省やヤフー株式会社からOSMへ地図データが提供されました。

OSMの地図はマッパーの自発的な活動に支えられているため、そこに描き込まれている情報の密度は地域ごとに差があります。企業や行政から提供を受けた地図データをインポートすることで、マッパーの手作業による地図作りを補完することができます。

OSMにおける地図編集は、衛星・航空写真をもとに建物や道路の形をトレースしたり、GPS端末やスマートフォンで取得した軌跡データや地点データをアップロードしたり、施設の名称や業種などを登録したりすることで行います。

OSMの編集ツールはPC用のほかスマートフォンアプリも提供されており、街中を歩きながら気軽に施設名称などを登録できます。なお、PCやスマートフォンを使わずに、紙の地図に記載して情報を収集する方法もあります。Wikipediaのように、すでに登録されている建物や道路の形、名称などが実際と異なる場合は、修正することも可能です。

ブラウザー上で動作するOSMエディタ「iD」 © OpenStreetMap contributors

OSMで被災地周辺の地図を描く活動「クライシスマッピング」

大手の地図サービスには掲載されていない過疎地域の地物も、衛星・航空写真をトレースすることで簡単に地図化できるのがOSMの特徴であり、このシステムを利用して、大規模な災害が発生した際に、世界中のマッパーが被災地周辺の地図を描く「クライシスマッピング」という活動も行われています。最初に大規模なクライシスマッピングが行われたのは2010年に発生したハイチ地震でした。

被災地の詳細な地図を作ることにより、被災者への支援活動や救援活動に役立てることができます。OSMの地図はオープンデータベースライセンス(ODbL)として提供されているため自由度が高く、端末に地図データをインストールしたり、地図をプリントアウトして現地で配布したりすることも問題なく行えるため、幅広い用途に利用できます。

なお、OSMのウェブサイトでは、OSMの地図データを使った地図が見られるようになっていますが、OSMのマッパーが作っているのは、GoogleマップやYahoo!地図のような地図サービスではなく、あくまでも地図データそのものです。この地図データは自由にダウンロードすることが可能で、商用・非商用にかかわらず、誰もがこれをもとにさまざまなデザインの地図を作ることができます。

みんなでOSMを更新する地図作りイベント「マッピングパーティー」

OSMを使った地図作りのイベントは「マッピングパーティー」と呼ばれており、日本でもさまざまなマッピングパーティーが開催されています。初心者に対してOSMの地図編集をレクチャーするためのマッピングパーティーもあれば、バリアフリー情報やAEDの設置場所、観光スポットなど、特定のテーマを決めて開催されるイベントもあります。

2013年1月に伊豆大島で開催されたマッピングパーティー

マッピングパーティーでは、参加者が街中を歩いて地図作りのための情報収集を行ったあとに、ミーティングルームなどに集まって地図に情報を反映したり、成果を発表したりすることでマッパー同士が交流を深められます。マッピングパーティーは誰でも自由に主催することが可能で、シビックテック活動の一環として行われる場合もあります。このようなOSMのコミュニティは全国各地に存在します。

OSMのデータは現在、AppleのiOS標準地図アプリやFacebook、Mapbox、MapTilerなどをはじめとして、さまざまな地図サービスに用いられています。OSMの地図編集には不特定多数が自由に参加できるため、中には不正確な情報が記載されていることもあります。しかし、そのときは誤りに気付いた人が修正を行ったり、コメントを残してほかのマッパーに情報を伝えたりすることで修正することができます。地図データの作製や更新、修正、使用に至るまで、さまざまな面で自由度が高いのがOSMの魅力なのです。

© OpenStreetMap contributors

URL

OpenStreetMap
https://www.openstreetmap.org/

OpenStreetMap Japan(日本地域のプロジェクト支援サイト)
https://openstreetmap.jp/