【ジオ用語解説】地理空間情報

位置情報を組み合わせることでより価値のある情報に

「地理空間情報」とは、位置情報が付与されたさまざまな情報を意味する言葉です。また、なにも情報が関連付けられていない位置情報そのものを地理空間情報と呼ぶこともありますし、政府や自治体などの公的機関では、地理空間情報のことを「G空間情報」と呼ぶこともあります。

この世で起こるさまざまな事象は、それが「どこにあるのか」「どこで発生したのか」「どこで調査した結果なのか」など、特定の場所やエリアの位置情報が紐付いているものが多く、位置情報が不明の場合は情報としての価値が失われてしまうものも少なくありません。

逆に、ある情報に位置情報が付与されることで、その情報の価値が向上したり、利用シーンが広がったりする場合もあります。

SNSの投稿や人流データ、カーナビなど身近で活用されている地理空間情報

地理空間情報として私たちに最も身近なものは、なんといっても「地図」でしょう。道路や建物、河川、街区などの形状や、そこに記載されるさまざまな施設の名前や住所は、すべて位置情報に紐付いている地理空間情報であると言えます。

Web地図サービス「Geolonia Maps」
Web地図サービス「Geolonia Maps」

さらに、このようなベースとなる地図の上に重ねる衛星写真や航空写真、災害や気象、環境、統計、台帳などの情報も地理空間情報です。スマートフォンで撮影した位置情報付きの写真や、つぶやいた場所の位置情報が付いたSNSの投稿なども、地理空間情報のひとつと言えます。

GPSによって収集された軌跡のログデータも地理空間情報のひとつです。コロナ禍において、スマートフォンのGPSから収集した人流データをもとに繁華街での混み具合を分析した結果が、テレビのニュースなどで頻繁に報道されています。このような多人数の移動軌跡を集積した人流ビッグデータも地理空間情報と言えます。

カーナビゲーションでは、道路や交差点なのつながりや道路幅員・車線数・規制速度などの属性データをもとに作成された「道路ネットワークデータ」を利用しており、このデータをもとに出発地から目的地までのルート検索などが行われます。この道路ネットワークデータは地図の上でユーザーが直接目にするものではありませんが、カーナビのシステムを実現する上では欠かせない重要な地理空間情報と言えます。

最近では、国土交通省が日本全国の3D都市モデルデータを整備するプロジェクト「PLATEAU(プラトー)」を開始しましたが、同プロジェクトが提供する3D都市モデルデータも地理空間情報です。また、自動運転車の実現のため、3D点群データによる高精度3次元地図の整備が進んでいますが、このような3Dデータも地理空間情報と言えます。

リアル空間の情報をIoTなどで収集し、サイバー空間上で再現する「デジタルツイン」の技術が注目される中、3Dの地理空間情報を整備する取り組みが活発化しています。

PLATEAUの3Dモデルデータ
PLATEAUの3Dモデルデータ

位置情報でデータを可視化して意味のある情報に

地理空間情報に共通しているのは、前述した通り位置情報が付与されていることです。位置情報をもとに地図上に統計データなどの情報をグラフや色分け、アイコンなどによってわかりやすく可視化することで、数字の羅列にしか見えなかった情報を意味のある情報として把握することが可能となります。

また、位置情報を軸にして異なるデータを重ね合わせて相互利用することにより、分析や解析などさまざまな活用が可能となります。たとえばある町に存在するマンションの位置情報をすべて地図上に可視化した上で、河川が氾濫した場合の浸水想定範囲を重ね合わせれば、浸水する可能性が少ないマンションがどれなのかを浮き彫りにすることができます。

日本では、1995年に起きた阪神・淡路大震災の際に、被災状況の把握や復興計画の策定のためGIS(地理情報システム)が注目されたことに加えて、米国のGPSおよび日本の準天頂衛星「みちびき」の整備が進み、衛星測位の利活用が求められていることが背景にあり、地理空間情報の利活用を推進するための「地理空間情報活用推進基本法」が2007年に成立・公布・施行されました。

さらに、2017年には新たな地理空間情報活用推進基本計画が閣議決定されました。この計画では、IoTやビッグデータ、AIなどの先端技術を活かした世界最高水準のG空間社会の実現により、「災害に強く持続可能な国土の形成への寄与」「新しい交通・物流サービスの創出」「人口減少・高齢社会における安全・安心で質の高い暮らしへの貢献」「地域産業の活性化、新産業・新サービスの創出」「地理空間情報を活用した技術や仕組みの海外展開、国際貢献の進展」の5項目を目指すべき姿としています。

一説によると、行政情報の約8割は地理空間情報に相当するともいわれています。手軽に位置情報を取得して地図で確認できるスマートフォンが普及したことや、衛星測位の進化、地図にさまざまな情報を重ね合わせて分析できるGIS(地理情報システム)の普及などにより、地理空間情報の重要性は今後もさらに高まっていくことが予想されます。

URL

地理空間情報活用推進基本法・基本計画とは
https://www.gsi.go.jp/chirikukan/about_kihonhou.html

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