ジオ用語解説「データ連携基盤」

データ連携基盤とは、さまざまなシステムやサービスにおいて蓄積されたデータを相互に利用するための基盤となるシステムで、データの収集・加工・管理や異なる形式のデータの交換などの機能を有しています。企業や自治体が利用するデータの量や種類が増加している中、これらのデータを適切に管理・分析し、ビジネスや行政の課題解決に役立てる上でデータ連携基盤の必要性が高まっています。

企業や自治体がデータ連携基盤を整備し、複数のシステムをひとつのプラットフォームに集約することにより、管理コストを節約できることに加えて、データの変換や処理にかかる時間や人材を減らすことによりコスト削減や業務効率化、生産性向上につながります。

データ連携基盤の導入によりデータの処理や変換を自動化することで、手動でデータを処理する機会が減って人的ミスの削減につながり、データの信頼性も向上します。また、複数の部門にまたがって同じデータを共有する場合にデータの整合性を保つことも容易になります。複数のシステムを直接連携する場合に比べて、データ連携基盤を構築するほうがシステム障害のリスクも低減できます。

スマートシティにおけるデータ連携基盤は、異なるシステム間でのデータ連携だけでなく、都市の効率的な運営管理やリソース管理、地域の垣根を越えたサービス連携などの機能も併せ持つプラットフォームであり、“都市OS”とも呼ばれています。

都市OSの導入によって異なる地域・システム間においてデータを連携することが可能となり、データの利活用を活発にして新たなサービスの創出を実現できます。自治体が扱うデータは公共施設や公共インフラ、交通データ、ハザードマップなどの防災用データ、環境データ、住民データなど多岐にわたりますが、住民に関する基礎データや健康データなどの個人情報と、公共施設データや交通量データなどの非個人情報データの両方を、セキュリティを確保しつつ安全に取り扱えるようにするのも都市OSの役割です。

スマートシティの実現を目的として自治体がデータ連携基盤(都市OS)を整備することで、具体的には以下のようなメリットを実現できます。

  • 地域間での共通サービス
    複数の地域サービスを共通化することでコスト削減を図れるとともに、役所に訪問する機会が削減されたり、行政窓口の待ち時間が削減されたりと、利用者の利便性向上にもつながります。
  • データ分析
    住民データや公共データなどデータ連携基盤で取り扱うデータを組み合わせて分析することにより、政策立案や住民の課題解決、新ビジネスの創出などに活用することができます。
  • 民間企業や外部都市との連携
    自治体や企業の垣根を越えたデータやシステムの連携が可能となります。新たなウェブサービスやアプリの開発コストも低くなり、ウェブ開発企業やデザイン会社の参入も活発になります。また、シビックテックやオープンソースコミュニティとの連携も期待できます。

自治体によるデータ連携基盤の活用例としては、以下のような事例が挙げられます。

■事例1:神戸市民の運動習慣の継続化に関する実証事業

神戸市、株式会社アシックス、株式会社アリストル、株式会社Wellmira、株式会社NTTデータ、三井不動産株式会社、BIPROGY株式会社、一般社団法人UDCKタウンマネジメントは、神戸市民の運動習慣の継続化に関する実証事業を、健康管理やフィットネスアプリが利用できるポータルサービス「スマートライフパス」とパーソナルデータ連携基盤「Dot to Dot」の共同利用により実施しました。

同事業はウェルネスサービスの利用による運動習慣の継続化を目的とした取り組みで、100名の参加者にパーソナルAIコーチが健康アドバイスを提供するアプリや、パーソナルフィットアプリ、バイタルデータ管理サービス、ベビーシッター・家事代行サービスなどを提供し、アンケート調査および提携サービス利用状況の分析を行いました。事業の成果として、参加者の運動量の増加や行動変容などが確認できました。

自治体が個別にサービスやデータ連携基盤を構築・運用すると時間とコストがかかりますが、神戸市では世の中に既にある優良事例に着目し、それらのサービスおよびデータ連携基盤を共同利用することで構築・運用の負担を軽減し、市民に価値あるサービスの創出を目指しました。

発表資料:データ連携基盤の共同利用による神戸市民の運動習慣の継続化に関する実証事業について

■事例2:高松市スマートマップ

Geoloniaが提供する地理空間データ連携基盤「Geolonia Maps for SmartCity」では、自治体の内外に散らばるさまざまな形式の地理空間情報を取り込んで、自治体や企業、市民が活用できるデジタル地図とAPIに変換・配信することができます。これにより、地図とデータを使ったアプリやウェブサービス、電子申請フォームを簡単に作成できます。地理空間データ連携基盤は、今年9月に内閣府がスマートシティリファレンスアーキテクチャホワイトペーパーの別冊に掲載しています。

高松市スマートマップ

同プラットフォームは、高松市が提供する「高松市スマートマップ」に導入されており、同マップでは施設情報をデジタル地図および都市情報APIとして公開・配信しているほか、行政が保有するGIS(地理情報システム)データや防災用のセンサーデータ、香川県が公開するハザードマップデータ、オープンデータなどを統合して防災アプリを公開しています。

発表資料:高松市スマートマップについて

デジタル庁は2024年6月、「第16回デジタル田園都市国家構想実現会議」において、さまざまな行政サービスや民間サービスを結ぶ生活用データ連携基盤については、デジタル田園都市国家構想交付金や各府省の支援により、80以上の地方公共団体で構築が進み、徐々に稼働していることを報告しました。

今後もデータ連携基盤の構築や積極的活用を推進するとともに、類似の機能を持つ基盤への重複投資の回避や、データ連携基盤間の円滑な連携を目指すため、各都道府県に対して域内外でのデータ連携基盤の共同利用ビジョンの策定を依頼しており、これを支援するための調査研究事業や伴走支援に取り組む方針です。

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