月刊グラフィア 2024年4月号
地図と位置情報を中心としたニュースサイト「GeoNews」の協力を受けて、2024年3月に掲載したニュースの中から厳選した5つの話題をピックアップして紹介します。
国交省のプラトー、3D都市モデルビューアの最新版「PLATEAU VIEW 3.0」を公開
国土交通省は3月29日、3D都市モデルの整備・活用を推進する「Project PLATEAU(プロジェクト プラトー)」において、3Dモデルを可視化できるビューアーの最新版「PLATEAU VIEW 3.0」を公開しました。
PLATEAU VIEW 3.0は、PLATEAUのデータをプレビューできるブラウザベースのウェブアプリケーションで、3D都市モデルデータやGISデータを可視化して様々な角度から見られます。
本バージョンではレンダリング品質が向上したほか、作図機能や日照シミュレーション機能、ヒートマップ表現などの機能が追加されました。また、Googleストリートビューとの連携が可能となり、現地の道路画像を閲覧できるようになりました。
また、同プロジェクトは、今年度整備した3D都市モデルを公開しました。これにより、PLATEAUで公開されている3D都市モデルの数は全国211都市となりました。データは一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会が運用する「G空間情報センター」にてダウンロードできます。
さらに、PLATEAUの3D都市モデルを活用したストーリーテリング型WebGISコンテンツ「PLATEAU Past & Future/for Action #001 Earthquake」も公開しました。同コンテンツは首都直下地震をテーマとしたもので、災害リスクや防災に関する情報がわかりやすくまとめられています。
国土地理院、全国の標高基準を表す「ジオイド2024日本とその周辺」の試行版を公開
国土地理院は3月27日、標高基準を表す「ジオイド2024日本とその周辺」の試行版を公開しました。
「ジオイド2024日本とその周辺」(試行版)は、重力データをもとに構築したジオイド・モデルで、公開するデータファイルには、衛星測位の高さの基準である楕円体高から、ジオイド(標高の基準)までの高さを表す「ジオイド高」が記載されています。同データと衛星測位で得られる楕円体高を組み合わせることにより、迅速かつ高精度に標高を求めることができます。
公開するのは北緯15~50度、東経120~160度の範囲で、日本の領土、領海および排他的経済水域(EEZ)を含みます。空間分解能は緯度1分~経度1.5分(約2km間隔)で、ファイルフォーマットは ISG-format(version2.0)を採用しています。
2011年に公開した「日本のジオイド2011」は、重力データを用いて構築した重力ジオイドと、GNSS測量および水準測量から得られた実測ジオイドと組み合わせて構築していましたが、「ジオイド2024 日本とその周辺」(試行版)は重力データのみを用いて構築した重力ジオイドであり、地殻変動や水準測量の累積誤差の影響が含まれていません。
国土地理院は、現在測量で用いている標高成果について、2024年度末に衛星測位を基盤とする最新の値へ改定し、長年の地殻変動で累積した海面と標高とのずれを解消する予定で、今回はその試行版となります。
また、「ジオイド2024日本とその周辺」の正式版の公開にともなって、GNSS観測で得られる楕円体高と「ジオイド2024日本とその周辺」により直接標高が得られる新たな測量手法「GNSS標高測量」を2024年度末に導入する予定です。さらに、「ジオイド2024日本とその周辺」と全国の標高成果改定により、高さ方向にも地殻変動を補正する仕組みを導入できるようになるため、正確な標高を効率的に決定できるようになります。
LINEヤフー、お花見スポットの情報を地図上や検索結果から確認できる機能を提供開始
LINEヤフー株式会社は3月14日、「Yahoo!マップ」および「Yahoo!検索」にて、全国約1000カ所のお花見スポットの情報を地図上や検索結果から確認できる機能を提供開始しました。
Yahoo!マップでは、地図上に「つぼみ」「咲き始め」「5分咲き」「7分咲き」「満開」「散り始め」「終わり」の7段階で当日の桜の開花情報が表示されます。また、「夜桜観賞」の絞り込みが可能なほか、「さくら名所100選」に選ばれたスポットのラベル、駐車場や売店の有無なども表示されます。
Yahoo!検索では、「花見」や「桜」と検索すると全国のお花見スポットランキングが表示されます。また、「都道府県名」や「特定の施設名」と合わせて検索すると、桜の種類や開花情報、公式サイトなどの詳細情報が表示されます。
ジオテクノロジーズ、街全体の歩きやすさがわかる「街歩きインデックス」を開発
ジオテクノロジーズ株式会社は3月5日、東京大学および麗澤大学の研究者と共同で、街のウォーカビリティを測る指標「街歩きインデックス」を開発したと発表しました。
街歩きインデックスは、歩行者が好んで選択する道順や場所を示すもので、地図上にスコアで可視化することにより、歩行経路の選択志向が理解しやすくなります。
計測手法は、ジオテクノロジーズが提供するM2Eアプリ「トリマ」の歩行軌跡データを活用して、一つの歩行移動に対して目的地への最短経路に-1点を、そして実際に選ばれた歩行経路に+1点を与えて計算します。最短経路を通った場合は-1点と+1点が与えられて0点になり、最短経路ではないのに選ばれた経路には+1点、最短経路にも拘わらず選ばれなかった経路は-1点とします。スコアが高くなればなるほど、遠回りでも選ばれる「居心地が良く歩きたくなる街路空間」ということになります。
同社は街歩きインデックスの事例として、東京都の浅草・スカイツリー周辺の道路を分析しました。よりスコアが高い道を赤、低い道を青で表現したところ、観光地である浅草寺やスカイツリー周辺、隅田川沿いでとくにスコアが高いことがわかりました。
同社は街歩きインデックスの活用方法として、歩行者空間の整備効果の測定を挙げているほか、通行者にとって現状の街路がどのように認識されているのかを分析するツールとしても利用可能であるとしており、通行者によって忌避されている道やエリアの要因を調査することで、景観の向上や防犯対策のための整備を行うなど、意思決定の指標にも利用可能としています。
産総研、阿蘇3火砕流の分布図と地質情報を公開
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)活断層・火山研究部門大規模噴火研究グループは、阿蘇3噴火により噴出した大規模火砕流堆積物の分布図を発表しました。
阿蘇3噴火は約13万年前に発生した巨大噴火で、噴出物の総量は数百立方キロメートルにおよび、噴出した火砕流堆積物は九州中部から北部に広くその分布が知られていますが、その後約9万年前に発生した巨大噴火である阿蘇4噴火の噴出物などに広く覆われているため、分布範囲やその構成物の詳細は明らかにされていませんでした。
今回は、従来の地質図では把握が難しかった火砕流堆積物の詳細な分布や層厚および特徴、日本列島の広域に堆積した火山灰の分布をデジタルデータで整備することにより、阿蘇3噴火の全体像とその影響の範囲を明らかにしました。さらに、阿蘇カルデラの長期的な活動や阿蘇3巨大噴火の推移、火砕流堆積物の特徴、各地の火砕流堆積物の露頭写真など解説書も加えています。
阿蘇3火砕流分布図とその解説書は、PDFファイルおよびGISデータとして産総研 地質調査総合センターのウェブサイトからダウンロードできます。
記事協力:GeoNews