ホームレスの社会復帰を目指す取り組み「Proxy Address」がロンドンで試験的に始まる
20万人がホームレスとされているイギリス。そのイギリス・ロンドンで試験的に行われているのが、Proxy Addressという取り組みです。
ProxyAddress
https://www.proxyaddress.co.uk
Proxy Addressは、ホームレスの人々に一貫性のある安全な住所を無料で提供し、ホームレスが公的機関など住所が必要とされる場での支援や基本的サービスを受け、社会復帰を促すことを目指しています。
住所は現在の社会では身元確認の手段となっています。職業の申請、台帳や戸籍の作成をはじめ、コロナ下で問題化したホームレスの持続化給付金などの手当申請も、住所が必要とされます。つまり、ホームレスになると、再起に必要な基本的サービス(銀行口座の開設、就職、給付金の受け取り、郵便物の受け取りなど)から遮断されてしまう状況があります。
一般的に、早期の支援があれば、ホームレスの状態から立ち直ることができる人が多いと言われている中、住所がないため必要な支援が得られず、時間の経過とともにより複雑な問題を抱える状態に陥りやすくなります。Proxy Addressでは、こうした問題を踏まえて、ホームレスへ既存の住所を使ったデータを作成して、無料で提供しています。
Proxy Addressが提供している住所の情報源は複数あり、自治体、住宅協会、住宅開発業者、個人の寄付、空き家の不動産所有者などから提供されています。
Proxy Addressのサービス利用
Proxy Addressのウェブサイトによると、利用の仕組みは次のようになります。
1.公的機関に問い合わせる
ホームレスになった場合、または8週間以内にホームレスになる可能性がある場合、公的機関に電話して予約を入れるか、今夜寝る場所がない場合は直接出向くこともできます。
2.ホームレス申請をする
適格性のチェックが含まれる、ホームレスの申請をします。地域の協議会がProxy Addressと提携している場合、この時点でProxy Addressが発行されます。その際に、不正行為を防ぎ、必要なサービスを確実に受けれるよう、Amiqus ID の確認が行われます。
3.Proxy Addressを使う
Proxy Addressは存在する住所を使用しており、公的機関での利用が認められています。宿泊できる住所ではないですが、必要なサービスを受け取るために利用できる住所という位置づけで、携帯電話のように、移動しても同じ住所が使えます。
郵便物にProxy Addressを使う場合は、通常の郵便局の転送サービスが活用され、Proxy Addressで発行された住所とホームレスの人の名前が書かれた郵便物が届きます。これらは、Proxy Addressのシステムを使って、短期滞在している住所、または選ばれた集荷場所に転送することも可能です。
こうすることで、頻繁に引っ越す人も同一の住所を使い、ProxyAddress を使って開設した私書箱や郵便局、地方自治体の窓口など、自分が受け取ることができる場所に送ることができます。
4.更新するには
初めて発行するProxy Addressは、6ヶ月間有効で、その後は地域の協議会に期限が切れる前に連絡します。また、自分の詳細情報、郵便物の配達・集荷場所は、オンライン、スマートフォン、SMSで更新できます。
住所の役割と個人の特定
Proxy Addressでは、住所と家を別物として扱っています。そもそも住所はこれまで家の場所を特定するためのものでした。 現在では、この情報が場所を越え、人を特定するためにも使われるように変化したことによって、安定した家を持たない人が疎外されています。これは、ホームレスだけの問題ではなく、虐待やDVなどの問題から逃れている家族や、定住する家を持たず移動しながら生活するライフスタイル「アドレスホッパー」などについても同じように考えられます。
Proxy Addressの試験的な取り組みが成功すれば、イギリス全土に広げていくようです。
URL
The Homelessness Monitor: England 2021 | Crisis | Together we will end homelessness
https://www.crisis.org.uk/ending-homelessness/homelessness-knowledge-hub/homelessness-monitor/england/the-homelessness-monitor-england-2021/
BBC News ‘Having an address got me a job when I was homeless’
https://www.bbc.com/news/business-56402018