月刊グラフィア 2022年10月号
地図と位置情報を中心としたニュースサイト「GeoNews」の協力を受けて、2022年9月に掲載したニュースの中から厳選した5つの話題をピックアップして紹介します。
東京大学とセック、人の交流が生まれやすいスポットを可視化する空間設計ソフトウェアを公開
東京大学 生産技術研究所の本間裕大准教授と株式会社セックは9月14日、人々の交流が生まれやすい場所を可視化するソフトウェア「Convex Space Visualizer」をGitHubにて無償公開しました。
Convex Space Visualizerは、建築空間や都市空間において、人々の交流が生まれやすいホットスポットの場所を、色の濃淡でリアルタイムに可視化するソフトウェアです。これまで空間設計において感性に頼っていた、人々の活発な交流が期待できる公共的な空間(パブリック空間)と、それぞれの人が静かに集中できる個室的な空間(プライベート空間)に対して定量的に可視化できます。
分析した空間形状をマウスで入力し、形状の微修正も簡単に行えるインターフェイスになっており、考え得る数万から数十万もの凸空間(誰もが視認可能で、対等な関係を築くことができる領域)を網羅的に列挙し、その分析結果をリアルタイムで得ることができるため、住宅のフロアレイアウトやインテリアデザイン、駅前空間や公園空間の活用など、幅広い空間設計に活用できます。
空間設計においてデザイナーだけでなくユーザーも主体的に参加することが可能となり、デザイナーも提案した空間形状の意図を、より説得力ある形でユーザーへ伝えられるため、とくに空間設計の初期フェーズでの活用が期待できます。
カーナビタイム、冠水注意地点とハザードマップの情報を提供開始
株式会社ナビタイムジャパンは9月30日、カーナビアプリ「カーナビタイム」にて、「冠水注意地点」と「ハザードマップ」を提供開始しました。
冠水注意地点は、全国約3,600カ所の大雨などで冠水する可能性がある地点をハザードマップ上で確認できる機能です。すべてのハザードマップ上に冠水注意のアイコンが表示され、アイコンをタップすると「渋谷駅ガード下」「目黒通り下アンダーパス」のように地点名称を確認できます。
ハザードマップは、洪水や土石流、がけ崩れ、地すべり、高潮、津波、雪崩の7種類に対応しており、地図メニュー内の「ハザードマップ」から確認したい地図を選択できます。リアルタイムの警報発令と連動しており、大雨特別警報や大雨警報、洪水警報、高潮警報、大雨注意報、洪水注意報、高潮注意報が発令された場合には、地図メニュー内の「ハザードマップ」ボタンに特別警報・警報・注意報が発令されていることを表記して注意喚起を行います。
カーナビタイムでは2021年8月から、走行中に降雨状況を考慮して、ルート上の冠水注意地点に近づくと音声で注意喚起をする「冠水注意地点案内」機能を提供しています。今回の対応により、出発前に地図上で冠水注意地点やハザードマップを確認することが可能となり、ルート上だけでなく周辺の注意地点も視覚的に把握できるようになりました。ルート検索後に地図を切り替えることで、走行予定のルートを見ながら冠水注意地点やハザードマップの注意エリアを確認できます。
JR西日本とマップル、高さ制限のある鉄道道路交差部における事故の抑制対策で協働
西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)近畿統括本部と株式会社マップルは、JR西日本の沿線において、両社で作成した鉄道道路交差部の高さ制限情報が記載されたデジタルマップを作成・公開することにより、高さ制限のある鉄道道路交差部における鉄道橋への自動車衝撃事故の抑制対策を行うと発表しました。
JR西日本近畿統括本部の管轄エリアでは、道路上空に鉄道橋が架かる交差部において通行車両が鉄道橋へ接触する事故が年間100~150件ほど発生しており、このうち年間で数回程度は列車運行に支障をきたすほどの事故に至っています。
そこでJR西日本とマップルは、JR西日本近畿統括本部が保有する高さ制限に関する情報(高さ制限地点の位置情報および高さ制限値)と、マップルの電子地図技術を掛け合わせることにより、高さ制限に関する情報が記載されたデジタルマップを作成しました。
このマップはマップルのウェブサイト「マップルラボ」の「MAPPLEのルート探索」に掲載されており、698地点の高さ制限情報が収録されています。両社はこのマップをトラックなどの運転手が走行ルートを確認する際の補助ツールとして活用を促すことにより、事故件数が抑制されることを見込んでいます。
国際航業、地上解像度5cmの超高解像度航空写真の販売エリアを拡大
国際航業株式会社は9月27日、超高解像度航空写真(高解像度オルソ画像)のライブラリデータの販売エリアを拡大すると発表しました。
同社が提供する超高解像度航空写真は、地上解像度5cmで路上の点字ブロックや車止めまで詳細に判読できます。画像相関による表層標高データを用いた作成方法によって建築物の倒れこみの無い航空写真オルソとなっており、位置精度は公共測量作業規定の地図情報レベル500に準拠しているため、建物や道路施設物などの地図化や調査、図面の位置の高度化といった幅広い用途で活用できます。
これまでの提供エリアは東京23区、横浜市、川崎市、名古屋市、大阪市、堺市、神戸市、京都市の主要都市エリアに限られていましたが、新たにさいたま市、千葉市、相模原市、仙台市、福岡市、北九州市、熊本市、岡山市、広島市、新潟市、静岡市、浜松市、札幌市の13都市を追加し、販売エリアを全政令指定都市に拡大しました。同社は今後、東京23区および政令指定都市の撮影更新を進めるとともに、販売対象エリアを中核都市などにも拡大する予定です。
ヒアテクノロジーズ、カーナビ開発ツール「HERE SDK Navigate」を日本で提供開始
HERE Technologies(ヒアテクノロジーズ)は9月13日、ソフトウェア開発キット「HERE SDK Navigate」を日本で提供開始しました。
同SDKは、トラック向けのルート案内や車載カーナビゲーションなどを開発するためのツールで、リアルタイムおよび過去の渋滞情報も活用できます。
複数の地図表示インスタンスや地図レイヤーの描画順序コントロール、俯角の制御、地図機能をカスタマイズするための統合ツール群などが含まれているほか、車やトラックのターンバイターンナビゲーション、詳細な経路案内、ジオコーディングと検索、ネットワークポジショニング、ダウンロード可能なオフライン用地図データなどの機能も提供されます。
記事協力:GeoNews